2011.03.11 (Fri)
これもブルース 第11回 木村充揮さんとの対談! 後編

ー前回のつづきー
サンコンJr.:憂歌団の始まりって、元々ブルースが好きな人の集まりやったんですか?
木村:ギターの勘太郎が、(エリック・)クラプトンのレコードのライナーノーツ見たら、B.B.キングやら黒人ブルースに影響受けたって書いてて、自分で探し出して聴くようになってん。で、オレが近所におったから「こんなんあんねんけど、木村、ギター弾けんねんやったら、カントリーブルースとかやって一緒に遊べへんか?」ってそんなノリやねん。
サ:へぇー、そうなんですか。
木:勘太郎がボトルネック自分で作ったりして。その横でサイドギター弾いとってん。
サ:へえぇー。
木:レコードなんかも「『ロバート・ジョンソン』って、絶対ええから、買えよ!」っていわれて、買って、聴いたんよ。エルモアもそうやけど「チュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチャイチャン」って全部一緒や。ロバート・ジョンソンも「ウィウィーウィウィーウィーアウィー」って、みんな一緒やなぁ思って。全然ピンとけえへんかってん。
サ:そうなんですか。
木:でもある日の夜中、友達が来たときかなぁ、同じレコードをかけたら、「スポーン!」って入ってきたんよ。「あ、このことか!」って。なんで同じ音が全然違うように聴こえんねんやろう?って思うくらい。人の気持ちってなんかあるやんか。「あ、この感じかなぁ」って。でもその頃は全然わかれへんかった。

サ:へぇー。
木:でも一番わかりやすいんは、ライブやった。初めてB.B.キングを毎日ホールで見たときに、「ドン!」ときた。「うわー、全然ちゃう!」って。レコードもええんやけど、もっともっと、もっともっと感じるものがすごいあった。その印象はずーっと残ってるなぁ。
サ:うわー、すごいですね!
木:76年にカントリーブルースのスリーピー・ジョン(・エスティス)とハミー・ニクソンと一緒に回ったんやけど、曲のキーが全部Gなんよ。簡単は簡単やねんけど(彼らは)自分の弾き方で弾くわけやんか。聴けば聴くほどな、すごいからな、真似なんかできるもんやない。テクニックとかそんなもんちゃうねん。聴けば聴くほどすごいんや。「うわー、なんやろう?」思てな。
サ:なんなんでしょうね?
木:感じるんやけど、これは真似できるもんじゃないって思うねんな。だからオレらはオレらの好きなことを、思うようにやるしかない。ひょっとして、歳いったら、あんなぐらいの雰囲気が出てるんかも知れんし。その頃ベースの花岡がストーンズが好きで、「オレらもずっとやってたら、ストーンズなれるか分からんぞ。もっとやってたら超えてるかも知れん」「そうやのう」とか言いながらやっとってん。
サ:本当にテクニックじゃないですよね。
木:テクニックちゃうよ。人の好みってそれぞれいろんな好みもあるし、クラプトンもものすごい人気もあるし、うまいと思うよ。でもオレはもっともっと感じるもんがあると思う。もっともっと深いもんがあると思う。だって黒人の人とクラプトンが弾いたら全然ちゃうもん。「芯」というか、「人の深さ」というか、「自由」とか、いろいろあんねん、体から出てくるもんが。「黒人やからいい」とかそういうもんじゃないねんけど、もらってるもんがあるんよ、感じるもんが。だからもっともっといろんな音楽聴いて、いろんな人に出会って欲しいなぁと思うねんなぁ。
サ:うわー、すごいですね。僕のこの連載のタイトル「これもブルース」っていうんですけど、「これがブルース!」っていうものがないと思ったからこういうタイトルにしたんですけど、いま、木村さんがおっしゃったことが、「ブルースとはなにか?」って答えなんかなと、、、。結局、その人からにじみ出てくるもんなんかなぁと思ったりして。
木:そんなんやんか。「ブルースって何かな?」って。その人それぞれが思うことやねん。感じて思うことが体から「すっ」と出てくることやと思うんやわ。「ブルースやってるんですね?」って言われんねんけど、「いや、僕は僕です」って答えるんよ。「ブルース」ってただの言葉やんか。「ジャズ」にしろ何にしろ。

サ:うむむ、そうですね。
木:でもな、ブルースっていうもんは「自然」に近いと思うねん。なんか「土」から生まれてくるもんやと、オレは思ってんねん。アーバンブルースとかモダンブルースとかいろいろ言うけど、もともとはそういうもんがあんねん。体から出てくるもんも「自然」やんか。頭でいってるもんは「頭」やんか。体からくるもんて「頭」じゃないから、もっと自然に感じるもんがある。
サ:直接入り込んでくるというか、、、。
木:それもある。もともと中にあるもんやから、あったかいねんな。そんな感じかな。ぎょうさんあるなぁ。「ブルース」いうたらいろんなことがあると思うわ。生きて感じることが全部ブルースちゃうかなぁ。
サ:生きてることがブルースですか!
木:そういうことやん。生きるいうのは、生き方もいっぱいあるけど、生活賭けてるいうのかな。
サ:そうですね。
木:「歌はどうして生まれるの?リズムはどして?」ってあんねんけど、自分の中から勝手に出てくんねんや。「アフリカのリズムがええ!」とかって話になったりするんやけど、結局やるときは全部自分のリズムやからな。

サ:そうですよね。
木:そうやん。だいたい真似から始まるんやけど、「ずーっと真似やっとんなぁ。こいつ自分のリズムでてないなぁ」いうやつがものすごい多いねん。でも子供の頃って勝手に自分のリズムがあんねや、本当は。変にいろいろやってもうたりするから、「そうやないよー!」ってな。何も考えんと出てくるもんが一番気持ちええやん。こう動かなアカンとかじゃなくて、勝手に動けてるってな。
サ:うわー、すごいなー。そうなりたいですよ。
木:一緒やん。そうなりたいいうか、そういう気持ちでやってるってな。「よっしゃ、今日はうまいこと行った!」思っててもな、次の日はガタガタになんねん。そんなんずーっとうまいこと行ってたら、もうつぶれてるって。
サ:ダハハハハ。本当にそう思いますよね。「こないだはこうできたのに、今日は全然ダメだー!」ってね。でもそれも含めて自分やからみたいなところですね。
木:そう。最近、覚えることよりも忘れることのほうが大事やと思ってんねん。特にいいことは忘れろ!って。いいことも悪いことも忘れた方がええねんって。ほなら今をもっと感じるから。過去に引きずられることは、今を感じられへんことになってくるから、あんまりよくないことがいっぱいある。
サ:うわぁ、それすごい言葉ですね!
木:でもな、勝手に出てくんねやんか。出てくるかなぁ?じゃなくて、出てくるから心配ないねん。で楽しなってきたらもっともっと時間欲しい。なんでこんなに楽しい時間が終わってしまうの?って。あぁ、でもそうか、また明日あるやんって思ったらなぁ。
サ:そうですよね。
木:・・・とかなんとかなぁ、いってるけどなぁ、全然アカンわ、ハハハハハ。
サ:いやー、やっぱり一個一個の言葉の重みが違いますよ。
木:ううん。音楽なんてな、年齢でやるもんじゃないし。におたら(臭ったら)感じるし、もうたら(もらったら)頑張るし、溜まったら何か出したいし。そうやってずーっとやるやんか。そんでそのうち、もっと気持ちよくできることがあると思って動いたつもりがちゃんと失敗するって。ハハハハハ。でも失敗しても笑えたらなぁ。それが大事やわ。ちょっとした失敗を深刻にガァーって思うのはなぁ。あんまりなぁ・・・。
サ:ホントそうですよね。でも今日お話できてすごいよかったです。
木:うん、話すんのも楽しいし、音出すのも楽しいし、飲むんも楽しいし。ムキに楽しもうとすんなよって。ゆっくりせぇゆっくり、勝手に出てくるから。心配せんでも無理せなあかんときは無理せなあかんねんから。ガハハハハ。
サ:ガハハハハ!そうですね。
木:でも無理して続けとったら、できることもできへんようになってまうやんか。調子がいいときって自然に動くから。そんで変に頭で考えてたら、今度は自分のタイミングを逃してしまうから。まずは力抜いてゆっくり持っていったら行けるよーって。僕はそんなこと思うけど。
サ:いやー、自分に言われてるみたいですわ。
木:いやいや、一緒やで。人に言うことって自分に思うことやもんな。
サ:いやー、つくづく自分からは逃げられないなぁ、って思いますよね。
木:人の話もそうやけど、自分が音出すときなんかなぁ、40歳になってやっと人の音を聴けてるような気分になったんやけど、あっというまになぁ、やっぱり人の音聴いてないわ!って。
サ:えーっ!?ほんとですか?
木:うん、自分で思った。でもなそのあとに、オレは人に音を聴かさなあかんタイプやからそれでええねん!って。
サ:そこまでいってるんですね。
木:それが大事で、それを聴いて反応してくれるとかあるやん、お互いやけど。でもバンドのときって、みんな勝手にそういうことができててんなぁ、って。うまい人はいっぱいいるけど、ほんとの「ハーモニー」とか、「うねり」というのはそういうもんじゃないんやろなぁ、思って。なんやろなぁ?って思って。うまい人はいっぱいいるけど、なんやろなぁ?って思って。音出して楽しいってどういうことやろなぁ?とか思ったりしてなぁ。
サ:ううう、すごいです。
木:ブルースってなに?ってあるんやけども、結局は人の気持ちなんやろな。でもオレはブルースいうもんに「自然」とか「土」っていうもんも感じるから好きなのもある。そう、ブルースはシンプルや、わりと。
サ:シンプルすぎて、さっきのスリーピーの話じゃないですけど、真似できへんってとこまで行ってしまいますよね。
木:でも結局1拍でも、その1拍を楽しむのは同じやないわけやんか。その1拍を楽しむことやから、それはもう考えてなくて、勝手にスイングするって感じやんな。まぁ、意識してやってる間は、まぁ、そんなもんやんか。でも、意識すんねやったら、まぁ意識してやったらええやん。
サ:うわー、がんばろー!
木:まぁ、口ではこんなん言ってるけどな。
サ:いやいやいや。でも、だから好きなんやなぁ、っていうのが分かった気がします。木村さん達が作ってきた音楽がなんで好きなのか、すごい確認できた気がします。間違ってなかったなと思えるし。
木:憂歌団のメンバーはみんなけっこうクセあるでぇ。でもな、一緒にやったら一緒に遊べるいうのがな、楽しなってくるいうのがおもしろいと思ってん。なんやろな?
サ:なんでしょうね?
木:それはひょっとしたら、表現する楽しさとか、音楽の力やと思うねんけど。
でも、基本は歌とリズムやからな。リズムってダンスやからな。歌とダンスがあったらなんぼでも遊べるやん。ゴスペルかって楽器がなかっても全然オッケーやん。
サ:そうですよね。あ、そういえば、昔のステージドリンクって毎回お酒やったって本当ですか?

木:そうそう。飲まれへんとき以外はね。まずは一気でぐっと飲んでから始めてたから。酒も弱いししんどいしな。
サ:えっっっ!お酒弱いんですか?
木:弱い!!!
サ:ほんまですか?
木:ゆっくり、ダラダラ飲むのがいい。
サ:えぇっ、そうなんですか!すっごい飲むんかと思ってました!
木・サ:ハハハハハ!!!、、、、、。
こんな感じで、木村さんとの楽しい対談は終わっていった。
連載当時は「〜お話しできてほんとよかったです」までだったのだが、それ以降の会話も今回は載せてみた。
いま読み返すと、木村さんが何を言おうとしていたのか、当時の自分よりもちょっとだけだがわかるような気がする。
木村さん、ありがとうございました!!!
初掲載:2008.03.14.
加筆、修正:2011.03.11.
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