MUSIC

2010.07.23 (Fri)
ハート・オブ・ロックンロール
第3回「転がり続ける白い石達のギターリスト!」

Keith Richards キース・リチャーズ

言わずと知れたThe Rolling Stonesのギターリスト。1943年12月生まれなので、ちょうど65才になったところ(連載当時)。Martin Scorsese監督の映画「Shine A Light」も封切られて盛り上がっている(こちらも連載当時)のだが、知れば知るほど好きになっていくThe Rolling Stonesの魅力とはいったいなんなんだろうか?「ミック・ジャガーの声が好き!」という人もいれば、「単純に楽曲がいい!」という人もいると思う。メンバーそれぞれのキャラクターが輝いているのも魅力の一つだろう。今回は1988年と1992年にリリースされたKeith Richardsのソロアルバムに、その魅力のヒントを探してみよう。

Keith Richardsの初ソロアルバムが発表されたのは今から22年前、1988年のこと。The Rolling Stonesの活動で言うと、アルバム「Dirty Work」と「Steel Wheels」の間にリリースされている。俗に良く言われる「ミック、キース不仲説」が最高潮のころだ。

そのKeith Richardsの初ソロアルバムのバックをつとめるメンバーがこれまた強力で、Chuck Berryの映画「Hail! Hail! Rock'n'Roll」で共演したメンバー(前回のNRBQのベーシスト、Joey Spampinatoも参加している!)と、X-pensive Winos(エクスペンシヴ・ワイノス)というKeith Richardsのソロプロジェクトバンドががっちりと支えていて、すばらしい演奏が繰り広げられている。ドラマーで共同プロデューサーのSteve Jordanは「Hail! Hail! Rock'n'Roll」はもちろんのこと、The Rolling Stonesのアルバム「Dirty Work」にもクレジットがあるので、どうもその辺からKeith Richardsとの親好が深まっていたようだ。

-Talk Is Cheap-

88年にリリースされた初ソロアルバム。1曲目の「Big Enough」からもう大爆発の連続!!!ちなみに1曲目のこの曲のベースを弾いているのは、The J.B.'sでおなじみの、William "Bootsy" Collinsだ(ちなみにSaxはMaceo Parker!)。発表された当時、オレの周りで聴いている人もいたが、その頃は全くと言っていいほど、このアルバムには興味がなかった。あぁ、その頃から聴いていれば、、、。ロックンロールやソウル・ミュージック、ファンク・ミュージック、レゲエに至るまで、リズムの見本、お手本といった曲がたくさん収録されている名盤だ!!

-Main Offender-

92年にリリースされたこのセカンド・ソロアルバムも同様、バックを務めるのは共同プロデュースのSteve Jordanをはじめ、X-pensive Winosのメンバーだ。こちらは前作の「Talk Is Cheap」からさらに踏み込んだと言ったら良いだろうか、なんせ前作に引き続き、怒濤の「ノリ」が続いて行く名盤だ!

この2枚のソロアルバムには、なんとも気持ちのいい「すきま」があり、それを感じることができる。

こんなKeith Richardsのインタヴューがあった。

「キャンバスだよ。音のない部分。もし画家だったら、キャンバスを使うだろう?それで絵を描くとして、まぁ、そこここに筆をつけるだろう?でもほとんどの有名な絵は決してキャンバスを全部使ってないよ。それでそのビジュアルを"音"に置き換えてみれば同じことだ。音のしない部分がキャンバスなんだ。だから何もしない"ところ"が同じように重要で、さらにもっというと、なにかをするところが"どこ"かってことだよ。(中略)それがロックンロールだよ。」(リットーミュージック Steve Jordan / The Pocket より)

このインタヴューを読むとソロアルバムでの「すきま」やKeith Richardsが何を重要視しているかがわかるように思う。The Rolling StonesにはThe Rolling Stonesにしかない気持ちのいい「すきま」があって、それがいつまでも心をとらえて離さない魅力の一つだとオレは思う。


初掲載:2008.12.19.
加筆、修正:2010.07.23.

2010.06.25 (Fri)
ハート・オブ・ロックンロール
第2回 「新しいリズム&ブルースはロックンロール!」

NRBQ New Rhythm & Blues Quartet (始まりは5人組でQuintetだった)

なんとも名前からしてカッコイイこのバンド。1969年から活動していて来年でデビュー40周年(連載当時)というから驚きだ!日本ではなかなか知名度が上がらないバンドだが、The Rolling StonesのKeith Richardsをはじめ、さまざまなミュージシャンから愛され続けているロックンロールバンド。

とは言いながら、オレも知ったのは2001年のこと。ウルフルズのサポートピアノマン、伊東ミキオ氏が、ある日のリハーサルスタジオにNRBQのビデオを持って来てくれたのがきっかけだった。そのビデオはアメリカのTV番組でのスタジオライブの模様で、曲が始まるやピアノとクラヴィネットを「弾く」というより「叩きつけ」ながら歌っているTerry Adamsという人に、もう釘付けだった!ミキオ氏が「大好き!」というのが本当によくわかる。そこへ持って来てメンバー全員演奏がメチャメチャうまい!!!「うわーーー、こんなすごいバンドがいたんや!!!!!」というのがそのときの率直な感想だった。

    Terry Adams/Piano, Clavinet, Vocal
    Joey Spampinato/Bass, Vocal
    Al Anderson/Guitar, Vocal
    Tom Ardolino/Drums

というのがビデオで観たときのメンバー。(現在はギターがAl AndersonからJoey Spampinatoの弟、Johnny Spampinatoになっている)

-Scraps-

ミキオ氏に見せてもらったスタジオライヴのビデオで演奏されていた「Magnet」という曲が忘れられず、探しに探し回って、その当時、たまたま仕事でニューヨークに行ったときに見つけた1枚。1972年にリリースされたこのアルバムは、まだドラマーがTom Ardolinoではなく、Tom Staley。しかも、メンバーは5人でQuintet時代。名盤!


それから、ミキオ氏に、おすすめのアルバムはどれ?とか、アルバムがたくさんリリースされてるけどなかなか手に入りにくいとか(現在はそんなことないです!)、Chuck Berryの映画「Hail! Hail! Rock'n'Roll」でベースを弾いているのはJoey Spampinatoだとか、そのベースのJoey SpampinatoはThe Rolling StonesのBill Wymanが脱退したときにKeith Richardsにメンバーに誘われたけど断ったとか、いろんな情報を教えてもらった。そんな話をしていると、なんと、NRBQが来日することに!!!2004年の夏、吉祥寺スターパインズカフェでNRBQのライブを観る事ができたのだ!

-At Yankee Stadium-

初めてNRBQを聴くと言う人には、迷わずこのアルバムをお勧めしたい!!!1曲目の「Green Lights」から体が勝手に動くこのアルバム!!!「Get Rhythm」や「I Want You Bad」など名曲だらけの超名盤!!!1977年リリース。


ライヴ当日、なかなか始まらずどうしたのかと思っていたら、主催者の方が「えー、ピアノのTerry Adamsがホテルを出たとこまでは確認しているんですが、ちょっと行方不明になっていまして、もうしばらくお待ちください」と、そんな通常では考えられないハプニングからライブは始まった。そしてしばらくして舞台上手からメンバーが登場。Terry Adamsは前髪を頭の上でくくっていて、服装も着物っぽく、天女のような出で立ちに見えておかしかった。ドラムのTom Ardolinoは黒い半袖のシャツに黒い?ネクタイをしていたような。Joey Spampinatoの服装は残念ながら覚えてないけど、なんか変わった形のベースを弾いていたと思う。ampeg社のものかな?そしてギターはJoeyの弟、Johnny Spampinato。たしか赤いキャップをかぶっていた。とまぁ、そんな服装などは覚えてるくせに、肝心のライブの1曲目はなんだったのか?全っくもって思い出せない。なんせ曲が始まるや怒濤の演奏だったので、無意識にステージから3列目くらいのところまで近づいていた!!! 


NRBQという、こんなステキなロックンロールをやり続けているバンドがいると思うと、本当にうれしい!!!また日本でライブやってくれないかしら?

-Tiddly Winks-


連載当時はまだ聴いていなかったこのアルバム。連載以降にようやく聴いたのだが、これは素晴らしいアルバムだ!!!!!「At Yankee Stadium」にも匹敵する名曲、名演の数々!!!!!「Roll Call」は何度聴いても胸が熱くなるぜぃ!!!!!


2012年1月6日、ドラムのTom Ardolinoさんが永眠されました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。


初掲載:2008.12.05.
加筆・修正:2012.01.11.

2010.05.28 (Fri)
ハート・オブ・ロックンロール 第1回 「ロックンロールの王様!」
Elvis Presley エルヴィス・プレスリー
本名 Elvis Aaron Presley




「ユエンナキバラハゥンドッグ!」で有名なElvis Presleyの歌う"Hound Dog"を初めて聴いたのは高校生のときだった。当時、兄の部屋からはさまざまな音楽が聴こえてきていて、Elvis Presleyもその中に混ざっていた。兄の部屋にあったアルバム「Elvis' Golden Records」をすぐさまカセットテープに録音し、自分の部屋のラジカセでよく聴いていたのもこの頃。「Love Me Tender」よりも「Love Me」のほうが好きだったことや、「All Shook Up」という曲が何回聴いても「あ、モーシュコッ!」(何の意味もない!)としか聴こえないこととか、、、当時を思い出してみると、、、くだらないことばかり覚えていたりするもんだ。

-Elvis' Golden Records-


1956~57のヒット曲を満載したベスト盤。だったのに、CDになって収録曲が増えている。増えた曲が下に紹介したSUN時代のものも含まれているので、内容は超強力ベスト盤に!!!数年前、リリースされたベスト盤「30 #1 HIT」よりも、こっちのほうが断然思い入れのあるアルバム。

Elvisが歌う"Hound Dog"がもともとは女性ブルースシンガー、Willie Mae "Big Mama" Thornton(ウィリー・メイ・"ビッグ・ママ"・ソーントン)の曲と知ったのは、それからずーっと後のこと。初めて聴いた"Big Mama" Thorntonの"Hound Dog"は当時のオレには全然受けいれられなかったけど、いまは、普通に聴けている。

というか、最近はこっちのほうをよく聴いている。まぁ、当時のオレにはElvisの歌う"Hound Dog"ほうがわかりやすかったのは間違いのないこと。

そんな"Big Mama" Thorntonのアルバムを1枚。

-The Original Hound Dog / Big Mama Thornton-


アルバムタイトルからして、間違えようのないこのタイトル!編集盤がいろんなレーベルからリリースされているが、ほとんどと言っていいほど"Hound Dog"は収録されているのでご安心を。まぁ、そりゃそうよね。

そんな両者の「Hound Dog」を改めて聴いてみると、"Big Mama" Thorntonの歌声は、まさに爆発している!!!この「爆発力」を持った白人シンガーは当時いなかったらしく、ミシシッピのレコードレーベル"SUN Records"を設立したSam Philip氏もそういう白人シンガーを探していたようだ。そんなときに、Elvis Presleyと出会ったといわれている。Elvis Presleyの歌う"Hound Dog"も負けず劣らず爆発しているが、なんやろう?爆発の仕方が違うというか、爆弾の種類が違うというか。それが個性というものか。

-Elvis at SUN-


このCDの存在はタイスケ事務所の社長、森本さんに最近教えてもらった。「Mystery Train」や「Good Rockin' Tonight」、「That's All Right」など、 若々しく瑞々しいElvis Presleyの歌が聴ける!

いまでこそ当たり前のようにElvis Presleyの歌を聴いてるけど、当たり前じゃなかったその当時、この爆発力を持った白人シンガーの歌う歌はどういう風に聴こえていたのだろう?Keith Richardsは「肌の色が白でも黒でも関係ないとElvisは証明してくれた」と言い、「ものすごい刺激だった。ElvisがいなかったらBeatlesは存在しなかっただろう」とJohn Lennonが言っているように、Elvis Presleyの影響と存在たるや、我々の想像を遥かに超えたスーパーヒーローだったことが、この二人の言葉からよくわかる。 

「キング・オブ・ロックンロール」といわれているElvis Presleyも、小さいときから、やはり、ブルースやゴスペルという黒人音楽を好んで聴き、歌っていたという。

「ブルース」と「ロックンロール」の関係はまだまだ深そうだ。


初掲載:2008.11.21.

加筆・修正:2010.05.28.
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