MUSIC

2011.04.08 (Fri)
これもブルース 第12回 バケモンと悪魔とブルース!
Little Walter


今回は前回の木村さんとの対談にも「悪魔やー!」と出てきたLittle Walterを。

初めて聴いたのはウルフルズに入ってしばらくのこと。どういう経緯か忘れてしまったが、トータス松本氏に「Little Walter聴いてみたら?」と勧められ、CDを買ってはみたものの、どうも、入っていけなかったというのが正直なところ。当時のオレは、まだまだ「BLUES」という音楽に興味がわいていなかった。しかしながら、この連載がきっかけで改めて「BLUES」という音楽に接することができたのは本当に良かったと思っている。そしてLittle Walterの音楽にも。

Little Walterはブルースハープ(ハーモニカ)プレイヤーだ。この人のすごいところは、それまで素朴な楽器だったブルースハープをアンプで増幅させ、太く力強い楽器として確立させたことだろう。Muddy Watersがアコースティックギターからエレキギターに持ち替えたように、大都市シカゴでの「BLUES」の進化の上で、必然的なものだったのかも知れない。

-Blues With A Feeling-

1952〜59年までの録音からの好編集盤だ。代表曲「Juke」や「Off The Wall」、「My Babe」、Bo Diddleyも参加した「Roller Coaster」などなど、Little Walterの入門編としては申し分ないだろう。アルバムタイトル曲はPaul Butterfield Blues Bandも取り上げている。

-Hate To See You Go-


なんともえらいジャケットだ。上記のアルバムとダブっている曲もあるのだが、このジャケットのインパクトで買わずにいられなかった。タイトル曲の「Hate To See You Go」やPaul Butterfield Blues Bandも取り上げた「Mellow Down Easy」、「Oh Baby」など聴きどころが多い。上記のアルバムにも収録されている「Oh Baby」の違いを聴き比べてみるのもおもしろい。


38歳という太く短い生涯だったLittle Walter。2009年に公開された映画「Cadillac Records」は、ブルースの名門レーベル「Chess Records」にまつわる話なのだが、オーナーのLeonard Chess、Muddy Watersとともに描かれているLittle Walterの凄まじい生き様。ブルースに興味のある人には是非とも見てほしい映画だ。

これもブルース。

初掲載:2008.03.28.
加筆、修正:2011.04.08.
2011.03.11 (Fri)
これもブルース 第11回 木村充揮さんとの対談! 後編


ー前回のつづきー

サンコンJr.:憂歌団の始まりって、元々ブルースが好きな人の集まりやったんですか?

木村:ギターの勘太郎が、(エリック・)クラプトンのレコードのライナーノーツ見たら、B.B.キングやら黒人ブルースに影響受けたって書いてて、自分で探し出して聴くようになってん。で、オレが近所におったから「こんなんあんねんけど、木村、ギター弾けんねんやったら、カントリーブルースとかやって一緒に遊べへんか?」ってそんなノリやねん。

サ:へぇー、そうなんですか。

木:勘太郎がボトルネック自分で作ったりして。その横でサイドギター弾いとってん。

サ:へえぇー。

木:レコードなんかも「『ロバート・ジョンソン』って、絶対ええから、買えよ!」っていわれて、買って、聴いたんよ。エルモアもそうやけど「チュチュチュチュチュチュチュチュチュチュチャイチャン」って全部一緒や。ロバート・ジョンソンも「ウィウィーウィウィーウィーアウィー」って、みんな一緒やなぁ思って。全然ピンとけえへんかってん。

サ:そうなんですか。

木:でもある日の夜中、友達が来たときかなぁ、同じレコードをかけたら、「スポーン!」って入ってきたんよ。「あ、このことか!」って。なんで同じ音が全然違うように聴こえんねんやろう?って思うくらい。人の気持ちってなんかあるやんか。「あ、この感じかなぁ」って。でもその頃は全然わかれへんかった。



サ:へぇー。

木:でも一番わかりやすいんは、ライブやった。初めてB.B.キングを毎日ホールで見たときに、「ドン!」ときた。「うわー、全然ちゃう!」って。レコードもええんやけど、もっともっと、もっともっと感じるものがすごいあった。その印象はずーっと残ってるなぁ。

サ:うわー、すごいですね!

木:76年にカントリーブルースのスリーピー・ジョン(・エスティス)とハミー・ニクソンと一緒に回ったんやけど、曲のキーが全部Gなんよ。簡単は簡単やねんけど(彼らは)自分の弾き方で弾くわけやんか。聴けば聴くほどな、すごいからな、真似なんかできるもんやない。テクニックとかそんなもんちゃうねん。聴けば聴くほどすごいんや。「うわー、なんやろう?」思てな。

サ:なんなんでしょうね?

木:感じるんやけど、これは真似できるもんじゃないって思うねんな。だからオレらはオレらの好きなことを、思うようにやるしかない。ひょっとして、歳いったら、あんなぐらいの雰囲気が出てるんかも知れんし。その頃ベースの花岡がストーンズが好きで、「オレらもずっとやってたら、ストーンズなれるか分からんぞ。もっとやってたら超えてるかも知れん」「そうやのう」とか言いながらやっとってん。

サ:本当にテクニックじゃないですよね。

木:テクニックちゃうよ。人の好みってそれぞれいろんな好みもあるし、クラプトンもものすごい人気もあるし、うまいと思うよ。でもオレはもっともっと感じるもんがあると思う。もっともっと深いもんがあると思う。だって黒人の人とクラプトンが弾いたら全然ちゃうもん。「芯」というか、「人の深さ」というか、「自由」とか、いろいろあんねん、体から出てくるもんが。「黒人やからいい」とかそういうもんじゃないねんけど、もらってるもんがあるんよ、感じるもんが。だからもっともっといろんな音楽聴いて、いろんな人に出会って欲しいなぁと思うねんなぁ。

サ:うわー、すごいですね。僕のこの連載のタイトル「これもブルース」っていうんですけど、「これがブルース!」っていうものがないと思ったからこういうタイトルにしたんですけど、いま、木村さんがおっしゃったことが、「ブルースとはなにか?」って答えなんかなと、、、。結局、その人からにじみ出てくるもんなんかなぁと思ったりして。

木:そんなんやんか。「ブルースって何かな?」って。その人それぞれが思うことやねん。感じて思うことが体から「すっ」と出てくることやと思うんやわ。「ブルースやってるんですね?」って言われんねんけど、「いや、僕は僕です」って答えるんよ。「ブルース」ってただの言葉やんか。「ジャズ」にしろ何にしろ。



サ:うむむ、そうですね。

木:でもな、ブルースっていうもんは「自然」に近いと思うねん。なんか「土」から生まれてくるもんやと、オレは思ってんねん。アーバンブルースとかモダンブルースとかいろいろ言うけど、もともとはそういうもんがあんねん。体から出てくるもんも「自然」やんか。頭でいってるもんは「頭」やんか。体からくるもんて「頭」じゃないから、もっと自然に感じるもんがある。

サ:直接入り込んでくるというか、、、。

木:それもある。もともと中にあるもんやから、あったかいねんな。そんな感じかな。ぎょうさんあるなぁ。「ブルース」いうたらいろんなことがあると思うわ。生きて感じることが全部ブルースちゃうかなぁ。

サ:生きてることがブルースですか!

木:そういうことやん。生きるいうのは、生き方もいっぱいあるけど、生活賭けてるいうのかな。

サ:そうですね。

木:「歌はどうして生まれるの?リズムはどして?」ってあんねんけど、自分の中から勝手に出てくんねんや。「アフリカのリズムがええ!」とかって話になったりするんやけど、結局やるときは全部自分のリズムやからな。



サ:そうですよね。

木:そうやん。だいたい真似から始まるんやけど、「ずーっと真似やっとんなぁ。こいつ自分のリズムでてないなぁ」いうやつがものすごい多いねん。でも子供の頃って勝手に自分のリズムがあんねや、本当は。変にいろいろやってもうたりするから、「そうやないよー!」ってな。何も考えんと出てくるもんが一番気持ちええやん。こう動かなアカンとかじゃなくて、勝手に動けてるってな。

サ:うわー、すごいなー。そうなりたいですよ。

木:一緒やん。そうなりたいいうか、そういう気持ちでやってるってな。「よっしゃ、今日はうまいこと行った!」思っててもな、次の日はガタガタになんねん。そんなんずーっとうまいこと行ってたら、もうつぶれてるって。

サ:ダハハハハ。本当にそう思いますよね。「こないだはこうできたのに、今日は全然ダメだー!」ってね。でもそれも含めて自分やからみたいなところですね。

木:そう。最近、覚えることよりも忘れることのほうが大事やと思ってんねん。特にいいことは忘れろ!って。いいことも悪いことも忘れた方がええねんって。ほなら今をもっと感じるから。過去に引きずられることは、今を感じられへんことになってくるから、あんまりよくないことがいっぱいある。

サ:うわぁ、それすごい言葉ですね!

木:でもな、勝手に出てくんねやんか。出てくるかなぁ?じゃなくて、出てくるから心配ないねん。で楽しなってきたらもっともっと時間欲しい。なんでこんなに楽しい時間が終わってしまうの?って。あぁ、でもそうか、また明日あるやんって思ったらなぁ。

サ:そうですよね。

木:・・・とかなんとかなぁ、いってるけどなぁ、全然アカンわ、ハハハハハ。

サ:いやー、やっぱり一個一個の言葉の重みが違いますよ。

木:ううん。音楽なんてな、年齢でやるもんじゃないし。におたら(臭ったら)感じるし、もうたら(もらったら)頑張るし、溜まったら何か出したいし。そうやってずーっとやるやんか。そんでそのうち、もっと気持ちよくできることがあると思って動いたつもりがちゃんと失敗するって。ハハハハハ。でも失敗しても笑えたらなぁ。それが大事やわ。ちょっとした失敗を深刻にガァーって思うのはなぁ。あんまりなぁ・・・。

サ:ホントそうですよね。でも今日お話できてすごいよかったです。 

木:うん、話すんのも楽しいし、音出すのも楽しいし、飲むんも楽しいし。ムキに楽しもうとすんなよって。ゆっくりせぇゆっくり、勝手に出てくるから。心配せんでも無理せなあかんときは無理せなあかんねんから。ガハハハハ。

サ:ガハハハハ!そうですね。

木:でも無理して続けとったら、できることもできへんようになってまうやんか。調子がいいときって自然に動くから。そんで変に頭で考えてたら、今度は自分のタイミングを逃してしまうから。まずは力抜いてゆっくり持っていったら行けるよーって。僕はそんなこと思うけど。

サ:いやー、自分に言われてるみたいですわ。

木:いやいや、一緒やで。人に言うことって自分に思うことやもんな。

サ:いやー、つくづく自分からは逃げられないなぁ、って思いますよね。

木:人の話もそうやけど、自分が音出すときなんかなぁ、40歳になってやっと人の音を聴けてるような気分になったんやけど、あっというまになぁ、やっぱり人の音聴いてないわ!って。

サ:えーっ!?ほんとですか?

木:うん、自分で思った。でもなそのあとに、オレは人に音を聴かさなあかんタイプやからそれでええねん!って。

サ:そこまでいってるんですね。

木:それが大事で、それを聴いて反応してくれるとかあるやん、お互いやけど。でもバンドのときって、みんな勝手にそういうことができててんなぁ、って。うまい人はいっぱいいるけど、ほんとの「ハーモニー」とか、「うねり」というのはそういうもんじゃないんやろなぁ、思って。なんやろなぁ?って思って。うまい人はいっぱいいるけど、なんやろなぁ?って思って。音出して楽しいってどういうことやろなぁ?とか思ったりしてなぁ。

サ:ううう、すごいです。

木:ブルースってなに?ってあるんやけども、結局は人の気持ちなんやろな。でもオレはブルースいうもんに「自然」とか「土」っていうもんも感じるから好きなのもある。そう、ブルースはシンプルや、わりと。

サ:シンプルすぎて、さっきのスリーピーの話じゃないですけど、真似できへんってとこまで行ってしまいますよね。

木:でも結局1拍でも、その1拍を楽しむのは同じやないわけやんか。その1拍を楽しむことやから、それはもう考えてなくて、勝手にスイングするって感じやんな。まぁ、意識してやってる間は、まぁ、そんなもんやんか。でも、意識すんねやったら、まぁ意識してやったらええやん。

サ:うわー、がんばろー!

木:まぁ、口ではこんなん言ってるけどな。

サ:いやいやいや。でも、だから好きなんやなぁ、っていうのが分かった気がします。木村さん達が作ってきた音楽がなんで好きなのか、すごい確認できた気がします。間違ってなかったなと思えるし。

木:憂歌団のメンバーはみんなけっこうクセあるでぇ。でもな、一緒にやったら一緒に遊べるいうのがな、楽しなってくるいうのがおもしろいと思ってん。なんやろな?

サ:なんでしょうね?

木:それはひょっとしたら、表現する楽しさとか、音楽の力やと思うねんけど。
でも、基本は歌とリズムやからな。リズムってダンスやからな。歌とダンスがあったらなんぼでも遊べるやん。ゴスペルかって楽器がなかっても全然オッケーやん。

サ:そうですよね。あ、そういえば、昔のステージドリンクって毎回お酒やったって本当ですか?



木:そうそう。飲まれへんとき以外はね。まずは一気でぐっと飲んでから始めてたから。酒も弱いししんどいしな。

サ:えっっっ!お酒弱いんですか?

木:弱い!!!

サ:ほんまですか?

木:ゆっくり、ダラダラ飲むのがいい。

サ:えぇっ、そうなんですか!すっごい飲むんかと思ってました!

木・サ:ハハハハハ!!!、、、、、。


こんな感じで、木村さんとの楽しい対談は終わっていった。

連載当時は「〜お話しできてほんとよかったです」までだったのだが、それ以降の会話も今回は載せてみた。

いま読み返すと、木村さんが何を言おうとしていたのか、当時の自分よりもちょっとだけだがわかるような気がする。

木村さん、ありがとうございました!!!

初掲載:2008.03.14.
加筆、修正:2011.03.11.
2011.02.10 (Thu)
これもブルース 第10回 木村充揮さんとの対談! 前編
連載当時「10回目なんでなんかスペシャルな内容にしたいのですが、、、」と編集の方から嬉しいお言葉をいただき、ダメもとで「元憂歌団のボーカル、木村充揮さんと対談したい!!!」とお願いしたところ、トントン拍子で実現してしまった!!!


2008年の2月18日、神戸のジャズ喫茶「JAMJAM」にて。

サンコンJr.:タバコ、ずっと吸われてますよね。

木村:うん、そうね。

サ:でも歌声も全然変わらないじゃないですか。

木:喉にいいことはないんやろうけど、でもむっちゃ悪いってもんでもないんちゃうかな。人って悪いもんて本能で出てくるやんか。溜まりすぎたらやばい!なんとか出さんと!って。

サ:そうですね。歌を歌い出したのはいつ頃なんですか?

木:バンドで歌ったんは「憂歌団」が初めてやなぁ。中学の頃から友達とギター弾いて遊んだりしてて。歌は高校出たぐらいからかな。友達のとこ遊びに行ってて「ちょっと歌ってみたら?」いわれて、ちょっと歌ってみたら、「ええやん、ええやん、歌ったら」みたいな。



サ:えっ、そんなノリやったんですか!

木:そうそうそう。海苔好き?

サ:ガハハハハ!好きです!

木:ハハハハハ、そうかぁ。んで、小学校、中学校時代は人よりキー高いねん。キー高いからみんなに合わせたら低くて、オクターブ上げたら逆に「ワー!」言うわけやん。みんなクスクス笑うんよ。そんな感じやった。ほめてもうたこともなかったわ。

サ:そうなんですか。楽器をやるきっかけはなんだったんですか?

木:親父もギター弾いてたし、友達もギター弾いてたから、まぁ、周りの環境かな。

サ:その当時流行ってた音楽を聴いたり弾いたりしてたんですか?

木:それこそ中学の頃なんかGS(グループサウンズ)みたいなんを、ちょこっとしたりしとったなぁ。ギター持ったら「禁じられた遊び」弾いてみたり、あるやんか、そういうの。

サ:「禁じられた遊び」は僕もやりました。兄貴がギター持ってたから。とりあえずこれを弾けなあかんみたいな。弾けたとこでどうなんやろって感じでしたけど。

木:そうそう、なんとなく「ペンペンペン」とか「チョッチョッチョッ」とやってる間に、コードがあるのとか知り出して、いつのまにか弾けるようになっとった。どうやって覚えたんか知らんねん。そんなんやから人に教えたくても教えられへんのよ。弦の張り方とか、チューニングの仕方もどうやって覚えたんかわからへんねん。やってたらわかってくるやろ!ってやっとったから。

サ:すごいですね!

木:ギターも打楽器もピアノもすぐ音出るやん。もうサックスとか音が出るまで時間がかかるやつは、あかんわ。苦手やわ。

サ:僕もダメですわ。何年か前に、メンバーで管楽器吹けるようになろう!ってトランペット買ったんですけど、僕だけ音出なくて、早々にやめました。

木:ドラムはいつからやってるの?

サ:興味を持ったのは中学からなんですけど、兄が二人いてギターとベースやってたんですよね。で、同じ楽器を始めて教わるのも癪やったんで、じゃあ鍵盤か打楽器かなと。鍵盤は向いてないやろなぁと思ってドラムを選んだんですよ。うちのおかんが「これであんたがドラムやったら兄弟でバンド組めるなぁ」とか言ってましたね。結局組まなかったですけど。

木:ドラム言うたら憂歌団の島田が近所におってんけど、学区が違うからまだ、そんな知らんねん。で、家からドラムの音が聴こえてきて、「お、ここドラムあんねや、このドラ息子めぇ」って思とってん。

サ:ハハハハハ。たしか島田さんの家の裏にある倉庫で練習してたって・・・

木:そう。高校ぐらいかな。島田が軽音(学部)の部長やっとって、「勘太郎と練習したいねんけど部室貸してくれへん?」いうたら「ええよ」って。で家が近所でもあるし、「今度遊びにいってええか?」いうたら「ええよ」って。で行ったらベースの花岡も来てて、そんときはベース弾いたことなかったんやけど、「ギター弾けるんやったら、ベースも弾けるんちゃうか?」ってその場にあったベース弾いて。ほんならおもろいから(ステージ)出てみよかと、そんなノリよ。で金もろうたからみんな嬉しなぁ、いう感じやったな。

サ:わーっ、そんな感じで始まったんですね!そうだ、話が変わるんですけどマディ・ウォーターズと共演したんですよね?たしか80年でしたっけ?

木:うん、そう。マディは一緒にやって、ちょっとしてから亡くなってしもうた。年齢もええ歳やったしなぁ。76年に、スリーピー(・ジョン・エスティスの来日公演の前座とバックバンドを務めた)とやったときも、ちょっとしたら亡くなってもうたし。マディとかバケモンやもんな。

サ:え、バケモンですか???



木:大阪のサンケイホールでやってな、もうええ歳やで。マディの歌声はまぁ、(イメージが)あるやんか。で、ギター弾いてんのパッと見たときにタコみたいやった。

サ:タコ???

木:「ヒュヒュヒュヒュヒュヒュン、ヒュヒュヒュヒュヒュヒュン」てもうここ(手首)フニャフニャや。向こうの人、みんなスナップやわらかいやん。そのボトルのちょっとしたタイミングもあるんやけど、そのちょっとしたタッチな。「うわっ!」って。

サ:へぇー!木村さんでもそう思われたんですか?

木:うん。あれを真似しようとするやつがいたら、アホや。

サ:あー。

木:それぐらい、すごいな。

サ:はー。

木:あのころの人って、バック(バンド)の人もみんなバケモンばっかりやん。なんであんときの人って、みんなあんなにすごいんかなって思うぐらい。エルモア・ジェイムスも超強力やしなぁ。

サ:木村さんが見てもバケモンやと思います?

木:バケモンやで。マディもそうやし、エルモアも、いろんな人いっぱいおるけど、リトル・ウォルターとか聴いてもめちゃめちゃやもんなぁ。悪魔やで。

サ:ガハハハハ!顔もめっちゃ怖いですもんね。



木:顔もそうやけど、音聴いてるだけで、すごい世界観やもんな、、、。

後編につづく。


初掲載:2008.02.29.
加筆、修正:2011.02.11.
2011.01.07 (Fri)
これもブルース 第9回 不世出のブルースドラマー!
Sam Lay サム・レイ


Martin Scorsese監督が製作総指揮の「The Blues Movie Project」という、マニアにも初心者にも楽しめるブルースにまつわる映画が数年前に何本も公開されたのだが、その中の一つ「Godfathers and Sons (Marc Levin監督)」で、「世界最高のブルースドラマーで、Muddyとも共演。Paul Butterfield Blues Bandの結成メンバー!このニューポートでBob Dylan初のエレキ・ギター演奏の伴奏を!そんな伝説の男!不世出のSam Lay!」と高々と紹介され、ド派手な黄色のスーツで現れたのがこの人だった。

その後、Paul Butterfield Blues Bandのファーストアルバムを初めて聴いたのだが、先ほどの映画のときは「ふーん、そうなんや」くらいにしか思っていなかった自分が恥ずかしくなるくらい、このアルバムは素晴らしかった!!!

-The Paul Butterfield Blues Band-


先入観というものは怖いもので、ずいぶんと昔に聴いたときの印象があまり良くなく、やたらとギターソロが長いのがPaul Butterfield Blues Bandなんだと勝手に思い込んでいたので、それ以降全く聴かずにいたのだが、このファーストアルバムはそんなオレの先入観をブチ壊してくれた!!!Sam Layのキビキビとしたドラミングが気持ちいい!!!名盤だ!!!

-An Anthology : The Elektra Years-


上記のファーストアルバム以前の音源が収録されているこのベスト盤。もちろんドラムはSam Layだ!!!Little Walterの「Off The Wall」やJames Cottonの「One More Mile」、転がりまくるインスト「Nut Popper#1」など興味深い音源が収録されている!残念ながらSam Layがこのバンドに在籍していたのはファーストアルバムまでなのだが、その後は、ソロ名義のアルバムをけっこうリリースしているので興味のある方は聴いてみてほしい。


そうこうしていると、思いがけないところでこの人の名前を発見してしまった。Magic Samのアルバム、「Ann Arbor Blues Festival」のドラムが、なんとSam Layだったのだ!!!

-Ann Arbor Blues Festival / Magic Sam-


アルバムライナーノーツによるとライヴ当日、Magic Samは大遅刻で会場に到着したようだ。以下はその時の会話をオレなりに想像してみた。


主催者「おおー、来てくれたかー!!!サムー!!!」

Magic Sam「どうもすいません。家を出る直前にお腹が痛くなっちゃって、、、」

主催者「そうかそうか、じゃあ早いとこステージに上がって、、、あれ?2人なの???トリオ編成って聞いてたけど???」

Magic Sam「そうなんですよー、ちょっとドラマーが急用でこれなくなっちゃって、、、どうしようかなぁ、、、」

主催者「ええーっ!!!でもお客さんたち待ってるよ!!この場でキャンセルなんかしないでね!!!」

Magic Sam「ええ、わかってます。ちょっとだけ待っててもらえますか?」


とその場から消えたらしい。

その数分後、Sam Layを引き連れてステージに上がっていたという、、、。

この数分間に何があったのかはわからないが、おそらく別のバンドで出演していたSam Layが快く引き受けたのは間違いなさそうだ。

ドラマーは人間的にもプレイ的にも、「ノリ」が大事ということか。

目指すはそんなドラマー。

これもブルース。


初掲載:2008.02.15.
加筆、修正:2011.01.07.
2010.12.10 (Fri)
これもブルース 第8回「リアル・ジャパニーズ・ブルース・バンド!」
憂歌団

▲木村充揮 Vo. Gt.


▲内田勘太郎 Gt.


▲花岡献治 Bass


▲島田和夫 Drums


最初に聴いたのはどっちが先だったのか?

「大阪ビッグ・リバー・ブルース」がTVで流れていたのが先なのか、兄の部屋のステレオから「ベスト・オブ・憂歌団ライヴ」が聴こえてきたのが先なのか・・・。どっちにしても高校3年のときだったと思う。それまで「憂歌団」の名前は知ってたものの、なかなかその扉を自分では開けることができなかったのだが、そんなときにTVから流れてきたのが「大阪ビッグ・リバー・ブルース」だった。

いま思うと憂歌団の歌う「大阪ビッグ・リバー・ブルース」は、ブルースという音楽にあまり興味のない人に対して、憂歌団ならではのわかりやすさ、というか親しみやすさと言ったほうがよりピッタリくるだろうか。この曲は「Blues」というものをかなり噛み砕いて「ブルース」の扉を開けやすくしてくれたようにオレは思う。「ぅぉおおさかぁー!」という木村さんの歌い方を当時は真似したりしたものだが、自分がVo.を目指さなくて本当に良かったと思っている。

ベスト・オブ・憂歌団ライヴ-


同時期に兄の部屋から聴こえてきたこのアルバム「ベスト・オブ・憂歌団ライヴ」は、自分では何もブルースのことなどわかってはいなかったが、それでも、それまで聴いてきたバンドやシンガーとは明らかに違うものがあるのはわかっていた。当時のお気に入りはA面ラストの「ザ・エン歌」。もちろん今でも大好きな曲なんだが、いま思うとブルースなのにエン歌とは、、、。

ん?!

なんだ?この違和感は?

と同時にこの違和感のなさは?

日本人のブルースは演歌だ!なんてことは思ったこともないし、これからも思うことはないと思うけれど、憂歌団が演奏して歌うこの曲「ザ・エン歌」は、「もしかしてそうなのかなぁ、、、」と思ってしまうほどの説得力がある。それもこれも憂歌団というバンドならではの説得力だろう。

そういえば「ブルース」を「憂歌」と置き換えたのは、ギターの内田勘太郎さんらしい。その素晴らしいセンスにすべてがあるように思う。そんなこともあって、オレの中で「日本のブルースバンド=憂歌団」なのはこれからも、この先もずーっと変わらない。


関係ないんだが「憂」に「人」が寄り添うと、「優」しいって漢字になるのね。

うーん、なんかわかるような、わからんような、、、。でも「なにか」がそこにある、この感じ。

これもブルース。

-憂歌団-


1975年にリリースされた憂歌団のファーストアルバム。何がすごいって、いま聴いても演奏力、歌唱力がハンパないのが本当によくわかる!!!「嫌んなった」「シカゴ・バウンド」「ドツボ節」「おそうじオバチャン」などなど、名曲だらけの超超超名盤だ!!!


初掲載:2008.02.01.
加筆、修正:2010.12.10.
前の5件 1  2  3  4  5