MUSIC

2010.05.14 (Fri)
これもブルース 第1回「ブルースは爆発だ!」
Elmore James エルモア・ジェイムス 
本名 エルモア・ブルックス





先日、「サンコンさん、ブルースってナンすか?」と聞かれた。
が、即答などできず、
「うーん、ジャンルとかやなくて、なんだー、そのー、なんやろ?」
と、シドロモドロな回答で、正直、俺もよくわかっていない。

「ブルース」ってなんなんやろ?

こんな大きな問いかけに、果たして答えはあるのか?
正体が見えてくるものなのか?

こんな大きな問いかけに、果たして答えはあるのか?
正体が見えてくるものなのか?

ブルースに通じている人達のインタビューを読んだり、昔のブルースマンの映像を観たりしていると、こんな言葉によく出会う。

「ブルースは爆発だ!」

爆発か。なんかカッコイイ。そういやそんな名前のバンドもあるしね。

でも、何が「爆発」なんやろ?

うーん、、、それはこの先、棺桶に入るまで探し続ける永遠のテーマなのかもしれない。が、ここで、その「爆発」のヒントをくれるブルースマンを 紹介しよう。

ーBlues After Hoursー


ウルフルズに入って、最初に教えてもらったブルースマンがこの人。
トータス松本氏にこの人のレコードを貸してもらい、家に帰って聴いた時の衝撃はいまでも覚えている。

「なんじゃ、これは?!これもブルースなんか?!」と思わずにいられなかった。
この人のギターは本当にすごい音をしてる。スライド奏法(筒状の鉄やビンを指にはめて、ギターの弦の上を滑らせる奏法。チュイーンとかテイーンという音が する)でギターを弾いてるのだが、その音が、

「ギュワギャギャ、ギュワギャギャ、ギュワギャギャ、ギュワギャギャギョオン」

とか

「ジャイジャジャ、ジャイジャジャ、ジャイジャジャ、ジャイジャジャジャァジョオン」

とまあ、荒々しいというか、けたたましいというか。なんせ、豪快で痛快!なおかつ炸裂している!
いまにも、ギターから炎が噴き出てきそうな勢いがそこにある!
そんなElmore Jamesのギタースタイルを、トータス松本氏も受け継いでいる。

ここで

「Elmore Jamesのブルースは爆発だ!」

と言われると、

「ブルース=爆発」

の意味が、さっきよりもちょっとだけ、わかるような気がしてくる。

そんなElmore Jamesのアルバムをもう一枚。

ーShake Your Money Maker : The Best Of Fire Sessionー


いろんなレコード会社に吹き込んでいるのは、当時のブルースマンにはよくあること。このアルバムは1959~61年まで、FIRE Recordsに吹き込まれたものがまとめられているベスト盤。「Shake Your Moneymaker」、「The Sky Is Crying」、「Standing At The Crossroads」、「Dust My Broom」など、名曲が多数収録されている好編集盤だ!

そんなブルースの爆発とはほど遠く、先日、僕の腰も爆発した。
ブルースマンの表現だと、これはいわゆる絶倫男になるんやろうけど、
そうではなく、ギックリ腰というなんとも情けないやつ。

それが引っ越しの準備中だったからもう最悪。
まだダンボールに入っていない荷物が半分以上残ってる。

この状況、どうすんねん?

詰め込んでも詰め込んでも減らない荷物を眺めてる
詰め込んでも詰め込んでも減らない荷物を眺めてる
いるものだけ持って行け、これからの旅に

とまぁ、詩のようなものを書いてはみたものの、なんの足しにもなりゃしない。

結局、そんな状況を笑うしかないのだ。

これもブルース。

ーWhose Muddy Shoesー


連載当時、トータス松本氏に借りたレコードは上記の「Blues After Hours」だと思い込んでいたのだが、よくよく思い出してみると、このレコードだったと思う。このアルバムは1953年と60年の2回に渡り、 Chess Recordsに吹き込まれたものを、John Brimというブルースマンの曲とともに1枚のレコードにされて1969年に発売されたもの。「Madison Blues」や「The Sun Is Shining」(CDではボーナストラックが収録されている)、「Dust My Broom」(Fireのとは違うテイク)、「Talk To Me Baby」など、こちらも名曲が多数収録されている。

初掲載 : 2007.10.19.

加筆・修正 : 2010.05.14.




2010.05.01 (Sat)
Aretha Franklin
アレサ・フランクリン
本名 アレサ・ルイーズ・フランクリン


Aretha Franklinの曲を意識して聴くようになったのは、東京に出てきて数年経った頃、24才のときだった。それまでは、映画「ブルース・ブラザース」に出演していたということと、「Respect」や「Think」などの有名曲くらいしか知らなかった。そんなオレに「Rock Steady」 や「Day Dreaming」、そしてMuscle Shoalsのミュージシャンを教えてくれたのは、当時のウルフルズのプロデューサー、伊藤銀次氏だった(銀次さんにはAretha Franklinだけでなく、いろんな音楽やミュージシャンを教えてもらったことを本当に感謝しています!)。

Aretha Franklinは1942年、ミシシッピ生まれ。まもなくデトロイトに移り住むことに。父親はデトロイトの教会で有名な牧師だったこともあり、小さい頃から教会で歌っていたようだ。1960年にレコードデビューするが、そのゴスペルフィーリング溢れる歌声は、1967年、名門Atlantic Recordに移籍してから、さらに花開くことになる。

ここでは個人的に気に入っているアルバムを紹介しよう。

ーI Never Loved A Man The Way I Love Youー


Atlantic Record移籍後、初のアルバム。当時のプロデューサー、Jerry Wexlerの提案でAlabama州Muscle Shoalsのミュージシャンをバックバンドに起用。これが見事に的中し、以降ヒット曲を次々と生み出して行く。このアルバム以降、その関係は4作ほど続くことに。Aretha Franklinが尊敬してやまないソウルシンガー、Sam Cookeのカヴァーも2曲収録されている。このアルバムの音の質感は大好きだ!収録されている曲も素晴らしい曲ばかり!名盤!

ーLive At Fillmore Westー


どこかで一度は、このアルバムジャケットを見かけたことがある人も多いのではと思う。それくらい有名なこのアルバムは、1971年の3月にサンフランシスコ、フィルモア・ウェストで3日間に渡って行われたライヴコンサートの模様が収められている。すでに大ヒット曲を連発していたAretha Franklinだったが、プロデューサーのJerry Wexlerは白人層(ロック好きの若者達!)にさらにAretha Franklinの歌を聴いてもらいたいという思いから、このコンサートを行ったという。サンフランシスコのこの会場で、黒人のソウルシンガーとファンキーなインストゥルメンタルバンドがコンサートを行うということは、当時では、まず、考えられなかったことだと、ピーター・バラカン氏が下のCDのライナーノーツで語っている。



このCDは当日のライヴコンサートのバックバンドを務めたバンド、「King Curtis & The Kingpins」が、Aretha Franklinが出演する前に演奏していたインストゥルメンタルをまとめたCDだ。こう書くと「前座」のように聞こえてしまうのだが、そこは、 恐ろしい演奏が繰り広げられている!特にDrumsのBernard Purdieの演奏は、もう、謝らずにいられない、、、すいません。

Ray Charlesまで飛び入りしたこの「Live At Fillmore West」 。どちらも歴史的名盤なので是非とも聴いてみて欲しい。


ーYoung, Gifted And Blackー


何度もいろんなところで言っているが、このレコードは本当に大好きなレコードだ!特に頭の3曲は、もう、やられっぱなし。上記のライヴ盤から参加している、Cornell Dupree(Guitar)とBernard Purdie(Drums)に加え、Chuck Rainey(Bass)、Donny Hathaway(Organ,Electric Piano)と伝説のミュージシャンの名演が聴けるこのアルバム。そしてもう一人、伝説のドラマー、Al Jackson Jr.(Drums)もアルバム中、2曲でドラムを叩いているのだが、その1曲がアルバムトップを飾る「Oh Me, Oh My (I'm A Fool For You Baby)」だ。Aretha Franklinの感情を見事にサポートしているその演奏を是非とも聴いてみて欲しい(印象的なベースを弾いているのは「Eric Gale」とクレジットされているけど、あのEric Galeなんでしょうか?)。冒頭にも書いた「Day Dreaming」と「Rock Steady」もこのアルバムに収録されている!超名盤!!!

Aretha Franklinには、今回紹介できなかったアルバム「Lady Soul」や「Amazing Grace」、Curtis Mayfieldがプロデュースした「Sparkle」など、まだまだ名盤、名曲が存在しているので興味のある方は是非とも他のアルバムも聴いてみて欲しい。



2010.05.01.
2010.04.01 (Thu)
James Brown
ジェイムズ・ブラウン
本名 ジェイムズ・ジョセフ・ブラウン・Jr.


初めてJames Brownの音楽を聴いたのは高校生の頃だった。オレには兄が二人いるのだが、一番上の兄の部屋から聴こえてくる音楽は、あるときはアリスだったり、そう かと思えば、LoudnessやScorpionsが聴こえてきたり、かと思えば、A.R.B.やThe ModsやThe Roosters、そして1週間後にはNew Orderが大音量で聴こえてきたり、といま考えるととても面白い環境だった。

そんな中、いままで聴いたことのなかった60年代のリズム&ブルースが聴こえてくるようになり、Otis ReddingやSam Cooke、Solomon Byrke、Don Covayと名シンガーの名曲が詰まった編集テープがよく聴こえてくるようになった。この時期の音楽経験が、いまの自分の音楽的な基礎に なっているのは間違いのないことだ。そのカセットテープの中に、James Brownの「Try Me」も収録されていた。映画「ロッキー4」の大ヒットで当時流行っていた「Livin' In America」のようなド派手なパフォーマンスこそないものの、「Try Me」という曲は、リズム&ブルースやソウル・ミュージックに興味を持ちはじめた普通の高校生をノックアウトするには十分すぎる曲だった。

James Brownのイメージというとやはり「Cold Sweat」や「I Got You」、「Sex Machine」、などファンキーな曲のイメージが真っ先に浮かぶと思うのだが、「Try Me」などに代表されるバラードの名曲も数多く、ここで、シングルカットはされてはいるがあまり知られていない名曲を紹介してみよう。

「Just Won't Do Right」
Album-    Please, Please, Please
  The Singles Vol.3
  The Singles Vol.7(メインVo.はLyn Collins)

「この曲はもっとヒットするはずだった」と、自身の自叙伝「俺がJBだ!」にも書いている通り、素晴らしい名曲だ。とは言うものの、オレもこの本を読んで から聴き直した一人です。すいません、ブラウンさん。「ビッグヒットになったはずだが、いろいろなことがうまくいかなかった」というのと 、James Brown本人も強い思い入れがあって、この曲はJames Brownの音楽人生の中で、合計5回も録音されているとのことだ。しかしオレが知っているのは3バージョンだけ。あとの2つはどんなんなんやろか?どのバージョンも好きだが、やはり最初に吹き込まれたものを一番よく聴いている気がするなぁ。

「You've Got To Change Your Mind」
Album- I Can't Stand Myself
  Singles Vol.5

この曲はもう、本当に本当に、本当に名曲だ!収録されているアルバム「I Can't Stand Myself」が一番好きな理由も、この曲が入っているからとも言えてしまうくらい大大大好きな曲!!!盟友Bobby Byrdとのデュエットというスタイルで進んで行くのだが、ハイライトはなんと言っても、Otis ReddingやSam&Daveの曲のタイトル、自身の曲のタイトルを歌詞に盛り込んでBobby Byrdとの掛け合いになっていくエンディング!何度聴いても胸が熱くなってしまう名曲だ。

ここでその大名盤も紹介することに。


ーI Can't Stand Myselfー


アルバムタイトル曲は高校生の頃に初めて 聴いて以来、いまだに練習曲の一つに入っている。この曲のバックを務めるのはナッシュビル出身のThe Dappsという白人のバンド(彼らがバックを務めた曲はこの曲以外にも多数存在)なんだが、 この曲は数々のヒット曲と違い、ドラム、ベース、ギター、オルガンととてもシンプルな楽器構成で成り立っており、 ホーンセクションが全く入っていないというのもあって、James Brownがロックバンドをバックにシャウトしているようにも聴こえてくるのがおもしろい!(この曲のコンプリートバージョンが「Foundations Of Funk~A Brand New Bag: 1964~1969」で聴ける)「When Did You Take Your Love Away From Me」もおそらくこの編成で録音されていると思われる。他にも「Get It Together」や「There Was A Time」、ファンキー・インストゥルメンタル「Soul Of J.B.」(2009年、Great Meeting 3で演奏した!)も収録されている。「Time After Time」はアナログ盤とCDではバージョンが異なっているのはなんでだろう。

ーIt's A Motherー


実はこのアルバムの存在を知ったのは、つい数年前。レコードは高すぎたし、CD化もずーっとされてなかったのもあって、全然聴いていなかったのだが(すい ません、言い訳です)、いまのいままで聴いていなかった自分を本当に後悔しまくった素晴らしいアルバム!なんせ、1曲目の「Mother Popcorn」を聴いたときは気絶するかと思った!!!!!(CD Box Set「Star Time」には、この曲のコンプリートバージョンが収録されている!)ドラマーはファンキー・ドラマーこと、Clyde Stubblefieldだ。「Cold Sweat」や「I Got The Feelin'」、「Funky Drummer」などJames Brownのイメージする、「ファンキー・ミュージック」を発展させる上で、素晴らしいドラムを叩いたドラマーだ。この人がいなかったら、いまの音楽は もっと退屈なものになっていたんじゃないかと思わせるくらい、重要なことをしてきた人だとオレは思っている。そんなClyde Stubblefieldのスーパープレイがこのアルバムでは存分に堪能できる。しかし厄介なことに、現時点では、またもや入手困難になっているのが実に 悲しいことだ。


ーIn The Jungle Grooveー


このアルバムは1986年に編集されたものなので、オリジナルアルバムではないのだが、内容は本当に素晴らしい!先ほど紹介したファンキー・ドラマー、 Clyde Stubblefieldに加え、John "Jabo" Starks、それにMelvin Parker(Sax奏者、Maceo Parkerのお兄さん!)とJames Brownには欠かすことのできない3大ドラマーのプレイが、この1枚で感じることができる!サンプリングされまくった「Funky Drummer」が収録されているのもあり、このアルバムはいまだに大人気だ。William "Bootsy" Collinsを筆頭とした、オリジナルJ.B.'sの演奏も存分に感じて欲しい。現在はジャケットもカラーになり、1曲追加されたものがリリースされて いる。


2006年の12月に天国に旅立ってしまったJames Brown。

「The Godfather Of Soul」の残してくれた偉大な曲の数々は、永遠に受け継がれていくのは間違いのないこと。

2010.3.31.



ー 参考文献ー
・ジェームズ・ブラウン自叙伝
「俺がJ.B.だ!」 ジェームス・ブラウン ブルース・タッカー著

・レコードコレクターズ増刊 
「ジェイムズ・ブラウン〜永遠のファンキー・プレジデント〜」 
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