MUSIC

2010.10.08 (Fri)
これもブルース 第6回「ヘーイ!ヘーイ!とジャングルビートがやってきた!」
Bo Diddley ボ・ディドリー
本名 Ellas McDaniel


この連載を始めてから思い出して聴き直したレコードは結構あり、いま聴いても「うぉぉぉおおおおおー!」と思うものや、当時、一度は聴いてみたものの、「うーん、、、、、」と、そんなに興味をそそられなかったものが、いまになってすごくかっこ良く聴こえたり、と音楽の素晴らしさを改めて実感している今日この頃。今回のBo Diddleyという人は当時も今も「うぉぉぉおおおおおー!」となってしまう人だ。

この人のレコードはその昔、ウルフル・ケイスケ氏に借りてカセットテープに録音して聴いていたのだが、そのカセットテープもどこにいったのか見当たらず、現在、Bo DiddleyのCDは入手困難な為(連載当時)、ケイスケ氏がまだアナログレコードを持っているか尋ねてみた。


サンコンJr.「昔借りたBo Diddleyのレコードってまだ持ってます?」

ウルフル・ケイスケ「あるけど、CDちゃうで。レコードやで。」

サ「ええ、レコードでいいんです。たしか、『ファースト』と『GO Bo Diddley』とあと何枚か借りたと思うんやけど・・・。」

ケ「『ファースト』は持ってたかどうかわからんけど、他のはあるわ。ベスト盤やったらCDも持ってるし。」

サ「じゃあ借りてもいいですか?初期の頃のアルバムがCDで手に入りにくくなってるんで。」

ケ「そうなんや。ええよ、ええよ。今度全部持っていくわ。」

-GO Bo Diddley-


ブルースの名門「Chess」レーベルからリリースされた2ndアルバム。名曲「Crackin'Up」収録!1959年リリース。現在はCDで手に入るようだ。

Bo Diddleyの曲も、最初の出会いはThe Rolling Stonesのファースト・アルバムに収録されている「Mona 」だった。いや、もしかしたら、The Roostersがカヴァーしてた「モナ」のほうを先に聴いていたような、、、。「ジャガズジャガズジャガ、ウジャジャンジャン!」とこの人のトレードマークになっている「Jungle Beat」(や「Bo Diddley Beat」)と呼ばれているリズムの曲なんやけど、誰もが知っているリズムに自分の名前が付いているって、すごすぎる!

-Bo Diddley Is A Gunslinger-


この人の曲は本当にノリが良く、シンプルで、とてもなじみやすい。コーラスとの掛け合いの曲も数多くあり、聴いているだけで本当に楽しくなってくる! このアルバムはChessレーベルからの5作目で、The Kinksのカヴァーでもよく知られている「Cadillac」が収録されている他、タイトル曲の「Gun Slinger」や「Ride On Josephine」など、口ずさみながら体が動いてしまうこと間違いない!1961年リリース。

-In The Spotlight-


Chessレーベルからの4作目。超名盤!このジャケットに写っている四角いギターを初めて見たときは、「こんなギターあるんや?!」ってな感じで驚かずにはいられなかった。「Road Runner」「Let Me In」など名曲多数!リリースは1960年。

四角いギターに「Go Bo Diddley」のジャケットでも着ていた派手なタータンチェックのスーツと、今思うと、このBo Diddleyという人は当時としては、かなりコンセプトがはっきりしていた人のようだ。曲の大半が8ビートではなく2ビートを基本としてるとこも、ブルースとロックンロールの架け橋的な存在と言われてるのはとても納得のできるところ。ちなみに、BO GUMBOSの「BO」はBo Diddleyの「BO」からきてるのは有名な話。どんとさんも四角いギター弾いてたなぁ。

そんなBo Diddleyの影響は、未来永劫この先も続く。

現在、79才のロックンローラー。

これもブルース。

初掲載:2007.12.28.
加筆、修正:2010.10.08.


追記:2008年6月2日、心不全のため永眠されました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
2010.10.01 (Fri)
Booker T. & The M.G.''s

Booker T. Jones (Organ),
Steve Cropper (Guitar),
Donald "Duck" Dunn, Lewis Steinberg (Bass),
Al Jackson Jr. (Drums),


Otis ReddingやSam & Daveで有名な、アメリカはテネシー州のメンフィスにあったレコード・レーベル「STAX」。そもそもはこのスタジオのハウスバンドとしての出会いから「M.G.'s」として始まったようだ。なので前記のOtis Redding、Sam & Daveを始め、Staxレーベルのシンガーのバックトラックを演奏した曲数はハンパない。そんな猛者達のインストゥルメンタルが世の中にリリースされたのが1962年だった。

-Green Onions-


タイトル曲の「Green Onions」を聴いたことがない人は、おそらくいないんじゃないだろうか?と思うくらい、いろんなところで流れているし、インパクトの強い曲だ。もともとはM-6「Behave Yourself」のB面用の曲としてつくられたとのこと。曲のタイトルは「出来る限りファンキーなものにしよう!」と、当時のベーシスト、Lewis Steinbergのアイデアで「Onions(タマネギ)」を付けるのは決まっていたらしく、最初は「Funky Onions」と呼ばれていたようだ。 Booker T. & The M.G.'sの代名詞にもなっているこの曲「Green Onions」は当時のリズム&ブルースチャートでNo.1になっている。

Booker T. & M.G.'sのアルバムを初めて買ったのは1994年のこと。当時のウルフルズのプロデューサー、伊藤銀次氏に「『Melting Pot』ってアルバム聴いてみて。サンコン絶対好きだと思うよ!」と教えてもらったのがきっかけだった。銀次さんには本当にいろいろと教えてもらったなぁ。

-Melting Pot-


1曲目のタイトル曲は、もう、呆然とするしかない!しばらくは身動きがとれなくなるんじゃないか?と思うくらいの迫力で迫ってくる。他にも「Back Home」、「Chicken Pox」、「LA Jazz Song」、「Sunny Monday」など名曲多数。この4人での最後のアルバムになってしまったが、間違いなく名盤だ。1971年リリース。

-Doin' Our Thing-

1968年リリースのアルバム。あまり有名なアルバムではなく、オレも最近ようやく手に入れた(CDは入手困難だが、iTunes Storeに行くとこの他にも入手困難なM.G.'sの音源が売っているのでとてもありがたい!)。内容はThe Soul Survivorsで有名な「Expressway (To Your Heart)」をやっていたり、The Associationの「Never My Love」があったりとなかなか渋い選曲だが、タイトル曲の「Doin' Our Thing」はドラマーのために録音されたのだろうか?というくらい、Al Jacksonのすごさが本当に良くわかる曲だ。さぁ、練習、練習。

-We'll Get Over/The Staple Singers-

ゴスペル・コーラス・グループ、The Staple SingersがStaxレーベルに移籍して2枚目のアルバム。M.G.'sのギタリスト、Steve Cropperがプロデュースしている。もちろんリズムセクションもM.G.'sのリズム隊だ。Booker T. Jonesは参加していないようだが、このアルバムも名曲、名演がたくさん収録されている。ビックリしたのが「ソーラン節」を日本語でカヴァーしていること!!!タイトルクレジットには、「Solon Bushi (Japanese Folk Song)」と書かれていて、実に惜しい。まぁ、そんなおまけは置いといて、本当に素晴らしいアルバムなので一度聴いてみて欲しい。

The Staple Singersもいつか取り上げたいなぁ。


2010.10.01.
2010.09.24 (Fri)
ハート・オブ・ロックンロール 第5回「ワイルド・サイドから帰ってきたロックンローラー!」

Lou Reed ルー・リード

高校に入ってから、兄や新しい友達の影響でいろんな音楽を聴くようになった頃、友達に録音してもらったのが「The Velvet Underground & Nico」(通称「バナナ」)だった。1曲目の「Sunday Morning」の親しみやすいメロディから、David Bowieもカヴァーしていた「I’m Waiting For The Man」へと、いままでに聴いたことのない音の世界に導かれて良く聴いたのを思い出す。しかしながら高校生のオレには「Heroin」と「European Son」の2曲は刺激が強すぎたので、当時はあまり聴いていなかった。

-The Velvet Underground & Nico-

いまでも良く見かけると思われるこのアルバムジャケット。このバナナはシールになっていて、はがすとバナナの中身の絵が出てくるようになっている。なんともすごい仕掛けだ。このジャケットをデザインしたのはバナナの下にデカデカと名前が載っている「Andy Warhol」という芸術家。The Rolling Stonesのアルバム「Sticky Fingers」のジャケットもこの人のデザインだ。

-Transformer-

Lou Reedというソロ名義になってからはたくさんのアルバムがリリースされているが、中でも忘れられないのはこの2作目の「Transformer」だ。プロデューサーにDavid Bowieを迎えて作られたこのアルバムは、ヒット曲「ワイルドサイドを歩け(Walk On The Wild Side)」が収録されているのもあって、発売当時は大ヒットしたようだ。オレが最初に聴いたLou Reedもこのアルバムだった。いま聴いても思うことは、まず歌のバランスがデカイ!ははは!かなりの音量でLou Reedの声が飛び出してくるのだが、それがなんとも気持ちがいい!「Satellite Of Love」や「Perfect Day」など名曲がたくさん入ってる超名盤!!!

けっこうボソボソと歌うというか、しゃべるというか、Lou Reedの歌はとても独特な歌い方だと思う。声にもすごく特徴があって、「あ、Lou Reed!」とすぐにわかる。同性愛やドラッグ、ときには破滅的で暴力的なステージング、とまぁ実にさまざまな生き方をしてきたLou Reed。歌が上手とかうまくないとか、そんなことはどうでも良くなるくらい、いつの時代のアルバムにもLou Reedの歌の中に何か熱いものを感じてしまう。うまく言えないけど、オレがLou Reedの音楽を好きなところはそういうところだと思う。


Lou Reedには「Rock’n’Roll Heart」という曲があるのだが、この連載のタイトルを考えているときに浮かんだのがこの曲のタイトルだった。で、その時にNeil Youngの「Heart Of Gold」が偶然流れていたのもあって、「Heart」つながりでこの連載のタイトルになった。Neil Youngもいつか取り上げたいなぁ。

-Rock’n’Roll Heart-


これがその曲が入っているアルバム。タイトルもそのままのRock’n’Roll Heart。あまり売れなかったアルバムのようだがタイトル曲の熱さが好きだ!

今回紹介した以外にも、The Velvet Underground時代の3枚目のアルバム「The Velvet Underground」やソロになってからの「Blue Mask」や「New York」、「Set The Twilight Reeling」など、名盤がたくさんあるので興味のある方は是非!


初掲載:2009.01.23.
加筆・修正:2010.9.24.

2010.09.10 (Fri)
これもブルース 第5回 「ウエスト・サイド・ブギー」
Magic Sam
マジック・サム



ある日の会話。

サンコンJr.「松本君、マジック・サムのあれっていいのん?」

トータス松本「ん!?あれって、どれ?」

サ「あの、ほら、『ブラック・マジック』やなくて、、、なんやったっかな、、、タイトルがわからんなぁ。」

ト「、、、。」

サ「ほら、ジャケットがサイケデリックな感じのあるじゃないですか。」

ト「、、、あぁ、『ウエスト・サイド・ソウル』かー!」

サ「そう!それ、それ!」

ト「あれ、すーんごいええよ!マジック・サムの中で一番好きやわ。」

ジョン・B・チョッパー「あれ、ええよ。全体がすごい明るくて、なんかカラっとしてる。」

サ「そうなんや。」

ジ「サンコン持ってないん?」

サ「うん、持ってないんよ。」

ジ「じゃあ、今度、貸したげるわ。」

という会話はつい最近の話(連載当時)。

-West Side Soul-


Magic Samのアルバム「West Side Soul」は本当にすばらしい。アルバム全体からは、ブルースというよりもソウル・ミュージックやリズム&ブルースの匂いを強く感じる。この人のギターもやはり爆発してるのだが、第1回のElmore Jamesのような爆発感とはちょと違っていて、もっと都会的というか、かなり洗練されているように聴こえる。「Feel So Good」のリズムギターの感じなんか、「グッツグッツグッツグッツ」とマグマの噴火直前のような、そんなことを想像してしまうのはオレだけだろうか。

ギターの一音一音がギラギラしてて、あまり訛っていないのが都会的に聴こえるのだろう。だからといって、あっさりしている訳でもなく、切れ味がするどいと言うとわかりやすいだろうか。そう、「切れ味がするどい」ということは、やはりリズムがすごく際立っているということだと思う。刀で「スパッ!」と斬られてる、そんな風に感じてしまう。Magic Samの歌声はいい意味でドスが利いていなく、カラッと乾いた声をしていて、ブルースによくある湿り気はあんまり感じない。そこにMagic Samという人の「憂い」がプラスされてこの人のブルースになるのだろう。興味のあるかたは是非とも聴いてみて欲しい。


高校生の頃、ソウル・ミュージックやリズム&ブルースに興味を持ち始めたのと同じように、「ブルース」という音楽にも普通に興味を持った。当時、The Rolling Stonesのライナーノーツで「Muddy Waters」という名前を覚えたように、「Magic Sam」という名前も何かの本で覚えていた。そんなある日、大阪のミナミ(心斎橋周辺)にあった「吉村レコード」という、ブルース、リズム&ブルース、ソウル・ミュージック専門のレコード屋さんを見つけて、おそるおそる入ってみたが、スタンダードなレコードからマニアックなものまで、ちょっと圧倒されるくらいの品揃えで、高校生の自分には相応しくないのがわかり、思わず「しまった!」と声を出しそうになったのだが、いま思うと、とても貴重なお店だった。

このお店はおもしろいところがあって、有名なアルバムや店長さんおすすめのアルバムには、プライスカードに「あるうちに買っときや!」とか、「もってな恥!」 というスタンプが押されていて、Magic Samのアルバム「West Side Soul」には「もってな恥!」のスタンプが押されていたような気がする。しかし、なぜかオレが手に取ったのは、なんのスタンプも押されていない、Magic Samがコブラ・レーベル時代にリリースされた「All Your Love」というマニアックなアルバムだった。

-All Your Love-


これはかなり通好みのアルバムだ。「West Side Soul」や「Black Magic」を聴いて、さらに、Magic Samを知りたい!という人が買うアルバムなんだと思う。が、なぜか、オレは最初に買ってしまった、、、。いま思うと、店長さんの言うことを素直に聞いて、「West Side Soul」をつかんでいたら、もっと早く、自分なりに「ブルース」に親しんでいたかもしれない。

何事も最初に感じる印象はとても大事ということか。

これもブルース。

初掲載:2007.12.14.
加筆、修正:2010.09.10.
2010.09.01 (Wed)
Jose Feliciano ホセ・フェリシアノ

Jose Feliciano
ホセ・フェリシアノ


おそらくこの名前を聞いて「!」となる人は、そんなに多くはいないだろう。プエルトリコ出身のシンガー兼ギタリスト。緑内障のため目はほとんど見えない。しかしながらこの人が弾くスパニッシュ・ギターと、ソウルフルでエネルギーに満ちあふれる歌声には、いまだに心をわしづかみにされる。

そんなJose Felicianoに出会ったのは、たしか12~3年前くらいだった。渋谷の中古レコード屋さんを巡り、「新入荷」の棚を端から端まで見ていたときにふと、目に留まったジャケットがこれだった。

-That The Spirit Needs-


なんともカッコイイこのジャケット。値段も1000円するかしないかだったので、「失敗してもいいや」ぐらいの気持ちでレジへ。 家に帰り、針を落として歌が聴こえてきた瞬間、「!」となったのをいまでも覚えている。 俗に言う「ジャケ買い」(CDやレコードのジャケットから、その中身の音楽を想像して買うという、とてもリスクの高いレコードの買い方)で成功した数少ない例だ。一時期、車のCMで流れていた、Cat Stevensの「Wild World」のカヴァーが収録されているのもこのアルバム。 現在CDで発売されているものはジャケットが違うので、興味のある方にはアルバムタイトルで探すことを勧めたい。

当時のクラブシーンでJose Felicianoが歌う、Stevie Wonderの「Golden Lady」のカヴァーが大ヒット(そういう言い方はおかしいのかな?)していたのも、たくさんアルバムが出ていることも全く知らず、事務所にいた音楽通の人にいろいろと教えてもらった。現在「Golden Lady」の収録されたアルバムが手元にないので、その他のアルバムを今回は紹介しよう。

-Feliciano!-


1968年にリリースされた大ヒットアルバム。The Doorsの「Light My Fire」や、The Beatlesの「In My Life」、The Mamas & The Papasの「California Dreamin'」、Bobby Hebbの「Sunny」など、ほとんどの曲がカヴァー曲で構成されている。このアルバムが一番好きという人もけっこう多く、いまだに人気の高いアルバムだ。

-Just Wanna Rock 'N' Roll-

1975年リリースのこのアルバム。このジャケットをジャケ買いする勇気は、残念ながらオレにはない。しかしながらこのアルバムに収録されているThe Temptationsのカヴァー「I Can't Get Next To You」や、Jose Felicianoのスパニッシュ・ギターが炸裂するインストゥルメンタル曲「Affirmation」は是非とも聴いてみて欲しい!近年、ようやくCD化されたようで嬉しい限りだ。

今回紹介できなかった「Golden Lady」が収録されているアルバム「And The Feeling's Good」や、Steve Cropperプロデュースの「Memphis Menu」、「Compartments」、「From My Love...Mother Music」など、名盤が多く残されているので、機会があれば聴いてみて欲しい。きっとJose Felicianoのことを好きな人は多いと思う。


2010.09.01.
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